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法人略史および歴代役員

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五 学校法人への移行

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 小中学校および高等学校の新制移行を承けて新制大学が発足したのは二十四年四月であった。これに伴い、従来は原則として財団法人によって運営されてきた私立学校のあり方も改められることになった。民法の定める財団法人は、理事の専断を許す余地を残すなど、学校の組織運営の主体としては必ずしも適切でない点があり、更に、国や地方公共団体が援助の手を差し伸べようにも、憲法は私立学校への公金支出を禁じていると一般に考えられていた。私立学校の自治と独立を保証しつつ公費助成を実現するためには、憲法解釈を調整する立法措置が必要となったのである。

 二十五年三月に施行された「私立学校法」は私立学校の設置者を学校法人とし、その公共性を高めるために法人の組織と運営にさまざまな条件を課した。先ず同法は第二十五条で、「学校法人は、その設置する私立学校に必要な施設及び設備又はこれらに要する資金並びにその設置する私立学校の経営に必要な財産を有しなければならない」とし、そのために第二十六条で「収益を目的とする事業を行うことができる」と定めた。第三十条では寄附行為を定めることを学校法人設立の要件とし、そこに盛り込まれるべき内容を「一、目的。二、名称。三、その設置する私立学校の名称。四、事務所の所在地。五、役員に関する規定。六、評議員会及び評議員に関する規定。七、資産及び会計に関する規定。八、収益を目的とする事業を行う場合には、その事業の種類その他その事業に関する規定。九、解散に関する規定。十、寄附行為の変更に関する規定。十一、公告の方法」と定めた。

 学校法人の役員は「理事五人以上及び監事二人以上」を必置とし、「理事のうち一人は、寄附行為の定めるところにより、理事長となる」ものとされた。また、「理事の定数の二倍をこえる数の評議員をもって」組織される評議員会も必置機関とされ、法人業務に関する重要事項はその意見を徴すべきことになった。

 学苑は「私立学校法」の要件を満たすべく寄附行為に相当する校規を改正し、二十六年三月に施行した。新校規では法人の名称を学校法人早稲田大学とし、財団法人早稲田大学が高等学院と工業高等学校を付属学校として抱えていたのを改め、学校法人早稲田大学が大学・高等学院・工業高等学校を設置する形にした。

 法人の理事長が大学の学長を兼ねる学苑の公選総長制のあり方は従来のままである。「私立学校法」の表現に倣って維持員会の名称は評議員会と改められたが、総長を除く六名の理事は、その評議員会における単記無記名投票の選挙で選任する原則が学苑独自の判断で成文化された。その選出区分は学部長および学校長から二名、評議員から二名、総長の推薦二名となった。新評議員会の定員も十名増員されて四十五名となった。

 これに伴って従来の評議員および評議員会も商議員および商議員会と名を改めた。これは「私立学校法」の規定に存在しない法人組織であるため、学苑は別途に「商議員会規則」を定めて商議員を選任することとした。同規則には昭和四十九年の改正に至るまで定数の定めがなく、当初は「二百二十七名以内」プラス「若干名」が四つの区分から選任されることになっていた。すなわち、評議員会が法人関係者のうちから推薦する者四十名以内、学内選出の教職員百十七名以内、校友会本部が所属の在京会員のうちから選出する者七十名以内、校友会各支部(地方校友会)が所属会員のうちから選出する者若干名によって商議員会が構成される。このうち校友会支部選出の若干名が、現実には数名程度に止まらず、例えば昭和三十二年六月には百四十一名を数えている。これを校友会本部選出の七十名以内と合計してみれば、商議員会はその圧倒的部分が学外校友によって占められることが分る。このような人員構成からしても、商議員会は校友と法人とを結ぶパイプとしての機能を期待される諮問機関であったと言えよう。そればかりでなく、商議員会は、法人の最高議決機関たる評議員の最大の選出母体ともなった。新校規では評議員の定数が四十五名とされ、そのうちの十名は学内商議員の互選で、十五名は学外商議員の互選で選出されたのである。残る二十名のうち十五名は、各学部長、体育部長および各学校長、総務部長またはこれに相当する者という職務による選任で、五名は評議員会推薦の校友が選任される。

 理事会・評議員会・商議員会を三本の柱とする学苑の法人組織は、この時の改正校規で整備されて戦後の学苑を一貫するシステムとなった。なお、学校法人に移行した当初の法人役員は、総長・理事・監事については島田総長以下の役員が引続き任に当り、新たな評議員・評議員会長・商議員・商議員正副会長には、それぞれ財団法人時代末の維持員・維持員会長・評議員・評議員正副会長がそのまま就任した。