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第十一編 近づく創立百周年

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第四章 新しい総長選挙制度の誕生

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 戦後、「私立学校法」に基づいて学校法人を設立した我が国の私立大学――とりわけ同族経営の大学――の殆どは、法人部門を統括する理事長と教学部門を掌理する学長とを別々に置いており、一般的に言って理事長の方が学長よりも権限が強く、教育・研究よりも経営が優先される傾向にある。これに対して、慶応義塾大学や我が学苑などでは、法人部門と教学部門とを切り離すのは問題が多いとして理事長と学長とを同一人物が兼ねてきた。しかし、歴史の古い私立大学の幾つかにおいても、塾長と呼ばれるにせよ総長と呼ばれるにせよ、学長としての権限よりも理事長としての権限の方が強い。これには理由が二つ考えられる。一つは、大学財政の巨大化により理事長職の比重が高まってきたことである。もう一つは、大学によっては教学部門に占める各学部教授会の自治権や教職員組合の発言力が強くて学内輿論の一致を見出すのが困難となり、学長としての地位が脆弱になったことである。我が学苑の総長は、理事会、教授会、教職員組合などの学内輿論の調整者であると同時に、財政基盤強化のために学外校友の支持を得なければならないという難題を背負っている。しかし、本来、大学の社会的評価は教育や学術研究に対して下されるべきものであるから、理事長としての総長よりも学長としての総長の方が重要な位置を占めて然るべきであろう。

 このような性格を持つ総長を選ぶ戦後の制度は、限られた範囲と人数とによる密室選挙であるとの不満が発足当初から存在した。発足当時に比べると、教職員数も校友数も格段に増えただけでなく、大学財政の巨大化、教授会自治の強力化、教職員組合の発言権強化により、総長の立場は相対的に弱くなってしまった。そうした情勢の中で学苑紛争が勃発し、大浜信泉総長は信認を失った。これを契機に、より多くの人々の信認を得た人物を総長に選び、多数の人々の意見を大学運営に反映させようとしたのが、昭和四十五年の「総長選挙規則」全面改正の狙いであった。

一 法人機構の再検討

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 阿部賢一が総長に就任して間もない昭和四十一年十月以降、学苑の現状を全面的に検討する必要があるとの認識が高まってきた。しかし、問題点があまりに多岐に亘ると予想されたので、広く自由に発言できる場を設けることが先決であると考えられたから、問題点を整理するための委員会を取敢えず発足させることになった。尤も、その裏には別の事情も存在した。すなわち、学苑紛争時に教職員自身から学費値上げに反対する文書が堂々と出回ったという事実に鑑みて、そのような重大問題をいきなり評議員会に諮るのではなく、前以て学内の理解と合意を得ておく必要があると痛感されたのである。こうして理事会は、学内各箇所の意見を集約するために、昭和四十二年四月二十七日、教育研究委員会と大学機構研究委員会との設置を決め、六月一日付で前者の委員六十名、後者の委員六十七名を嘱任した。発足に当って常任理事高木純一は、両委員会の「目的は学内の各部所からの、なまの声をきき、これを公式に記録し、問題の難易や比重を考え、次の段階の用意をすることである。権限こそないが、その声は尊重され、重要な討議の資料となると思う。ひらたくいえば、従来不足していた、公式の、総合的なコミュニケーションの場をもつわけである」(『早稲田大学広報』昭和四十二年六月二十三日号)と説明している。

 翌四十三年、教育研究委員会は七月十七日に、大学機構研究委員会は九月二十四日に、一年余の検討の結果を時子山常三郎新総長に報告したが、後者は総長選挙制度に関し次のようにまとめている。

 先ず総長の性格について。学校法人は、営利を目的とする傍らその収益で学校を経営するのではなく、教育・研究の遂行を目的に学校を経営するのであるから、法人業務と校務とは截然と区別することができないとの見地に立って、法人業務を統率する理事長と校務を掌る学長とを総長が兼ねてきたこれまでの制度に問題はないとする意見が大勢を占めた。複数の大学や学校を経営する場合には、法人業務と校務とを区別して理事長と学長とを置く必要があるかもしれないが、早稲田大学では、理事長と学長とを同一人が兼ねる方が実情に即しているというのである。

 次いで「総長選挙規則」に関し、次のような問題点が指摘された。

一、候補者が明らかでなく、暗黙のうちに候補者が決まり、選挙が行われるのが現状で、一応総長候補者と目されている人についても、その人格、政策(ヴィジョン)など適否を判断する資料がない。

二、間接選挙制を採っているので、選挙人の選挙結果に必ずしも各学部の輿論が正確に反映しない場合がある。

三、何らかの方法で、専任教職員の意思を的確に反映させる必要がある。

四、選挙管理の仕方、選挙人の数、学内外の比率、被選挙資格(年齢や再・三選等の制約)、総長の任期、選挙権の重複等について検討する必要がある。

そして、右の問題点に関連して、次のような総長選挙原則論が多数意見として述べられた。

一、何らかの方法で総長候補者を定め、その候補者について投票により選挙する方法を採用すべきである。

二、総長候補者選定の際か、または総長選挙の段階かのいずれかにおいて、専任教職員全員の意思が反映する方法を考えるべきである。

 大学機構研究委員会がこのように総長決定手続の問題点を指摘した学苑の法人機構は、第十編第十二章に説述したところであるが、重複を厭わずここに要約しておこう。

 早稲田大学の総長選挙は直接選挙ではなく、各部門で選出された総長選挙人の投票によって決定する間接選挙である。その方式は、第四巻四二二―四二三頁に掲げた昭和二十一年制定の最初の「総長選挙規程」と原則の上で何ら変っていない。変更されたのは、本巻二四九頁の第二十五表に示したように、選挙人の員数および学外選挙人と学内選挙人との比率である。選挙人の数は、四十三年の改正により、学外では評議員二十八名と商議員六十四名の計九十二名、学内では役職者を含む教員が百二十三名(ただし二政・二法・二商の学部長は第一学部長兼任のため三名欠員)と職員が十八名の計百四十一名で、総勢二百三十三名となっていて、学内・学外の比率は三対二である。総長選挙人が決定されると、選挙人は互選により選挙人会長と数名の投票管理者を定め、総長選挙に移るが、それは五分の四以上の出席、一人一票、無記名投票により行われ、有効投票の過半数を得た者が総長となる。総長の被選挙資格には制限がなく、投票の対象となる候補者は前以て特定されていない。選挙人は総長としてふさわしいと考える人物の氏名を投票用紙に記入する。この方式は票が分散し易く、もし一回の投票によって当選人が決まらなかった場合は、二位までの得票者について決選投票が行われる。このような例は過去九回の選挙のうち五回見られた。

 こうして総長が決定されると、学内で選任された三十一名と学外から選ばれた二十八名との計五十九名で構成される最高議決機関の評議員会において、理事が選任される。理事の定員は総長を含めて十一名、任期は四年である。ただし、教職員でない校友のうちから選任される理事は三名を下ってはならないとされる。総長は理事の中から常任理事若干名を指名して業務を分担させる。大学財産の状況および理事の業務執行の状況を監査する監事二名は、教職員でない評議員から選ばれ、任期は二年である。

 「私立学校法」で設置を義務づけられていないが、学苑独自の判断で設けているのは、学事や会計の報告を受け、諮問事項について審議し、必要に応じて総長に建議する商議員会である。昭和四十五年時点で総数五百六名を数えた商議員の内訳は、学内商議員が百五十六名、学外商議員が三百五十名である。学外商議員は、「校友会規則」に従って東京都在住会員が選出する者八十名以内と、校友会支部が選出する者(支部の会員数が選出人数の基準となるから、年により変動する)とで構成される。

 学苑のこのような法人機構は、本編第六章で述べるように幾つかの重要な問題点を孕むものであるが、総長または学長に関して選挙制を採用している他の私立大学の制度とは大同小異であって、特に早稲田大学の制度が他とかけ離れて特異なものであるわけではない。しかし、学苑においては法人機構の不合理を是正し、更に大学改革という新たな視点に立って、校規の改正に着手することとなった。

二 校規および同付属規則改正案起草委員会の発足

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 本編第三章に述べたように、昭和四十三年十二月、大学改革の準備の一環として、教職員を構成員とする大学問題研究会の設置が決定されて翌四十四年七月正式に発足し、その第二研究部会が「大学全体の管理運営とその組織機構」をテーマに研究を開始した。一方、同じ四十四年の六月十六日、定時評議員会は、校規の改正権を持つ評議員会の特別委員会として、校規および同付属規則改正案起草委員会の設置を議決した。こうして法人機構を検討する機関が同時に二つ存在することになったが、学内評議員・学内理事から選ばれる四十四名と学外評議員・学外商議員から選ばれた三十三名との合計七十七名で構成される改正案起草委員会は、第二研究部会の研究成果を順次提供してもらうことを期待して、校規改正の作業を同時併行的に進めることになった。委員の顔触れは左の通りである。

学内委員

青木茂男 新井隆一 飯島洋一 井上勇 入交好脩 上田雅夫 上村正義 大須賀明 大西鉄之祐 岡田幸一 樫山欽四郎 葛城照三 加藤栄一 川副国基 河原宏 菊地一郎 北川幹造 木村時夫 日下部与市 黒板駿策 国分保 後藤一郎 正田健一郎 鈴木慎一 高島平蔵 滝口宏 谷資信 堤口康博 暉峻康隆 戸川行男 時岡弘 富山小太郎 中村尚美 中山敦夫 野村平爾 服部弁之助 浜田健三 堀江忠男 増田冨寿 三木一郎 矢島保男 山路平四郎 吉村健蔵 渡部辰巳

学外委員

浅沼栄吉 稲勝正太郎 牛木一男 内古閑寅太郎 大塚芳忠 大浜信泉 岡野伊三雄 小汀利得 久保九助 河野謙三 佐々木省三 佐藤欣治 末高信 鈴木球一 武野興三郎 立花盛枝 谷正男 谷鹿光治 友田信 中瀬直雄 鳴神孫七 野口保元 野島寿平 野尻高経 長谷部忠 原安三郎 藤井丙午 前川喜作 宮田重文 六角宇太郎 毛受信雄 望月威 万直次

 七月十一日に開かれた第一回委員会で、時子山総長は左のように挨拶した。

現行校規については数年来改正すべしとの意見が多く、阿部前総長のときに学内に大学機構研究委員会および教育研究委員会を設置し、四十三年九月および四十三年七月にそれぞれ研究結果の報告があった。更に学外評議員・商議員からも四十四年四月に意見書が出されたので、校規改正に着手することになった。学内には大学問題研究会を設置し、大学機構・教育研究委員会が審議をつくせなかった大学問題の基本的な検討をおこなうこととした。大学問題研究会はもっと早く発足すべき予定であったが、準備委員会の都合もあって遅くなったので、まず校規に関連する事項から着手し、その成果をこの委員会に提供して頂けることを期待している。この委員会の審議期間は現理事・評議員の任期に合せて一応四十五年八月末となっているが、なお継続して審議すべき事項があればその時点でさらに委員会を継続することも考えられる。この委員会の審議は校規全般にわたるが、当面の課題としては総長の任期との関連でまず総長選挙規則に取り組んで頂きたいと考えている。大学問題はいわゆる流動的であるが、早稲田大学としては現時点にふさわしい、かつ将来に備えた独自の結論を打ち出して頂けるようにご尽力願いたい。

この第一回委員会で委員長に評議員毛受信雄を、副委員長に商学部教授青木茂男を選んだ校規および同付属規則改正案起草委員会は、総長の意向を承けて総長選挙制度のあり方を先議することになった。翌年八月の総長選挙を控えて、早急に成案をまとめなければならないというタイム・リミットがあったからである。なお、議事内容や議事の進行状況を適宜公表すること、その方法については、委員の選出母体に対する報告とは別に、一般教職員や学生に対しては『早稲田大学広報』や『早稲田ウィークリー』などを通じて発表することが決められた。

 審議すべき事項は、総長の性格、総長の被選挙資格、選挙人の資格と範囲(学生参加の問題を含む)、直接選挙か間接選挙かの順序とされた。右のうち総長の性格および被選挙資格については第三回委員会で取り上げられ、総長が理事長かつ学長であること、また、被選挙資格を制限しない方がよいとする結論に落着した。大学の最高責任者として経営と教学とに幅広い職能を持つ総長には、人格高潔にして識見が高く、かつ、巨大化した大学をとりまとめるのに適した能力のある人を期待して、適任者を広い範囲から求め得る体制が望ましいと考えられたからである。

 第四回委員会以降は選挙人の資格と範囲についての審議に入り、教員、職員、校友、学生の順で討議されることになった。しかし、この議題そのものが、総長候補者選出制度をどうするか、間接選挙か直接選挙かによって、どの選挙人がどこまで関与するかという問題と連携する性格を持っており、それに応じて、選挙人とすべき者の範囲の広狭を論ずることが可能であったため、意見の内容は多彩を極めた。フリー・トーキング形式で発言されたそれらを整理すると、次のようになる。

 先ず教員の場合、選挙人の範囲はできるだけ拡大すべきであるという意見には異論がなかったが、問題は助手を含めるかどうかである。「助手の大部分は大学院博士課程に在学し、また、助手として相当の実績がないと辞めてもらうのが実情なので、選挙人とするかどうかは慎重に検討すべきである」とか、「博士課程を終えた助手だけを教員と同列に考えてはどうか」とか、「助手は、研究者としての資格を十分に持っている者もいるし、最近では教員会にも参加し、紛争などの際は大学の行政的事項にもタッチしている。総長選挙に関わりを持たせるべきである」とかの意見が出された。

 職員選挙人の資格と範囲については、「原則として専任者全員とすべきであるが、助手との関連で年齢二十五歳以上、在職一年以上の者とすべきである」、「一応、三等級以上の職員で、三等級にあっては三等級に五年以上在職する専任職員(本部各部課や学部事務所などの中クラスの職員以上をほぼ包摂する)としたい。ただし、三等級になれない職種(例えば労務員)については、代表を選挙人とする必要があろう」、「いや、学生参加を認めることになるならば、専任職員の範囲は拡げるのがよい」と、かなり具体的な議論が戦わされた。

 選挙人の五分の二を占めている校友については、大学運営への関与の仕方とその程度に関する見解をめぐり学外委員と学内委員との間で落差が存在したので、範囲を拡げようとする意見と狭めようとする意見とが衝突した。例えば、「地方の校友も大学の現状に多大の関心を持っているので、総長選挙に参画させるべきである」とか、「学外校友か教職員かによって総長選挙への関与の仕方を分ける意見に反対。広い視野で最適任者を総長に選出する必要があり、また、校友の愛校心を高める観点からも校友の関与は教職員と平等にすべきだ」とか、「私立大学は学生の納付する授業料だけでは運営できない。管理運営を円滑にするためには、学外校友に総長選挙権を持たせるべきだ」という発言もあれば、「すべての校友が総長候補者について知っているわけでないので、全校友を参加させることには反対である」という反論も出された。その一方で、評議員・商議員の範囲内から選ぶという現状維持を主張する委員もいれば、「総長選挙には教育・研究に携わる教職員が直接に関与し、校外的部分に補完的な関わり合いを持つ校友は、候補者を選ぶ段階で参画するようにしたらどうか」と新方策を提案する委員もいた。

 以上の議論は、学部選出選挙人の比率および学内外選挙人の比率の問題とも密接に絡んでくる。前者で問題となるのは、各学部の教員数に大きな不均衡が存在する点である。そこで、「学部間にパリティを設けて、候補者の選出に全員が参加できるようにし、その候補者のうちから総長を決める選挙の時に〔パリティによって〕各学部の票を同等にすべきである」との意見が出てくるわけであるが、「学部パリティ論は技術論であって本質的な問題でない。一人一票にすべきであろう」という反対意見も述べられた。他方、学内外選挙人の比率については、「教職員の人数は限定されているが、校友の数は大変な数であり、資格の区別もない。校友の選挙権については、その数が問題である」と指摘した上で、「学内学外の比率には確たる根拠がないと思うが、これを破ると校友に異論が出ると思われるので、選挙人の数が相当に増えてもこの比率は守るべきである」との現状維持論が出される一方、「学内三対学外二の比率についての意見は、従来の選挙制度を前提としたものである。教職員・校友・学生それぞれの大学に対する関与の仕方を議論するのが先である」という根本的見直し論も提起された。

 さて、その学生の総長選挙への参加の問題であるが、実は、紛争の過程で学生自身が総長選挙参加要求をスローガンに掲げたことはない。しかし、大学運営に学生の声をも反映させるのが望ましいという考え方が、学内委員の間ではほぼ定着しつつあった。もとより、「総長は大学と社会の接点の場所と考えるので、社会人として未熟な学生が総長を選ぶことは不適当である」という強硬な反対論も展開された。加えて、「不満解消、紛争回避ということでなく、学生参加がよいという科学的・学問的根拠を考える原則論も必要である」し、「学生参加の問題は今日なお流動的な問題で長時間の検討を要し、総長選挙に参加させることは時期尚早である。今回は見送りたい」とする根強い慎重論も主として学外委員を中心に存在した。しかし、「学生をも含めて大学に関わり合いを持つ者全員が参加すべきだ」という寛容な意見が比較的多かった。それは、学生を単なる受益者と看做すのではなく、学生も大学を構成する一員であるからには、学生から信頼された者でなければ総長として不適格であると認識されたためである。問題となるのは、総長選挙への関わり方であった。その参加方法については、「教員を主体的グループ、職員をこれに準ずるグループ、校友を助言グループとすれば、学生は批判グループであって、選挙に直接に関与させるべきでないが、拒否権または信認投票の形式で関与させることが考えられる」とか、「学生は大学についての社会的経験は足りない点はあるが、学生団としての意見が表れた方がよい。候補者を数名出した上で、その人について信認投票をさせる方法がよい」とか、「学生は、総長候補者が選定された段階で、候補者について拒否方式で投票するのがよい」とかの提案がなされた。更に、「総長選挙に拒否または信認の方法で関わるのでなく、リコール制のようなもので参加することを考えてはどうか」という発言に対して、「人格・識見を尊んだ総長にリコール制を採るべきでない」と反論が加えられたりもした。

 直接選挙か間接選挙かという論点については、「総長候補者を教職員が直接選挙で選出し、その候補者について間接選挙をして総長を決めるべきである」、「総長候補者は間接選挙とし、その候補者につきできるだけ広い範囲の直接選挙により総長を決めるべきである」、「総長候補者は推薦委員会が三ないし五名推薦し、その候補者につき全員が投票する方式がよい」といった意見が開陳された。

 さて、これらの問題を審議している間に、総長選挙制度に関する原則的事項について、大学問題研究会の考え方や議論の趨勢を聞く機会を設けてほしいとの要請があり、四十五年二月十八日開催の第九回委員会に同研究会第二研究部会の研究員全員に出席してもらって、総長選挙制度に関する意見聴取を行った。

 大学問題研究会第二研究部会が多数意見としてとりまとめた見解は、総長候補者の決定は投票によることと総長予定者の決定は直接投票によることとを前提とし、五一一―五一三頁の一覧表に示したような教員・職員・校友・学生それぞれの大学との関係の整理を念頭に置いた上で、選挙への参加の範囲に関し、左の如く述べられた。

一、教員の総長選挙に対する関わり方は原則として専任教員の直接選挙とすべきである。ただし、助手を加えるべきか否かについては、第三研究部会その他における検討をも含めて慎重に考慮する必要がある。教員団における助手の位置づけ、大学院生と兼ねている場合に起こり得る問題など、なお検討すべき問題を残しているからである。また、直接選挙における学部間のパリティの問題については、現在の学部を基本単位とする大学構成の実態から考慮の要があるとする意見もあったが、その点は、直接選挙における学部パリティの方式ではなく、候補者選定などの別の段階で検討されることが望ましいということになった。

二、職員の総長選挙に対する関わり方は教員の場合に準じ、専任職員の直接選挙とすべきである。ただし、直接選挙に参加する専任職員の範囲については、慎重に検討する必要がある。

三、校友を中心とする一般社会の意見を大学に反映させるということについては異論がない。しかし、そのことが、校友の総長選挙に対する投票という形での関わり方に直接結びつく必然性は少い。校友の一部は評議員や商議員として母校に意見を表明できる。この問題は、大学と学校法人との関係として当部会の重要な研究課題となっている評議員会および商議員会のあり方という点から検討されるべきものである。

四、学生全体の意見を大学に反映させることは望ましいが、総長選挙に対する投票という形での関わり方には問題があり、寧ろ信認、拒否などの他の方式を検討するのが適当である。

右見解は校友の比重を低める代りに学生への配慮が盛り込まれているため、特に学外委員を刺戟した。「大学が非常事態を切り抜ける時に、校友が広い視野から果す役割を検討したか」、「学生を批判グループと規定しているが、批判者は学生だけではない。なぜ学生だけに拒否または信認権を与えるのか」といった質疑に対し、「紛争時の校友の役割を考える場合、校友の調停は評議員会や商議員会などの機関を通じて組織的になされる」、「学生以外のグループは直接に選挙に参加するので、学生に拒否または信認権を与えようと考えた」との応答が展開された。

 ところで、校規および同付属規則改正案起草委員会は大世帯であるため、多様な意見は出ても、出された意見を煮詰めるには適さないとは、当初から予想されたところであった。そこで、ひと通り意見が出揃ったこの第九回委員会において、総長選挙規則改正要綱案を作成するための小委員会を発足させることとなり、左の二十名で成る小委員会は三月五日に活動を開始した。

浅沼栄吉 井上勇 上田雅夫 内古閑寅太郎 大塚芳忠 大浜信泉 岡野伊三雄 葛城照三 加藤栄一 菊地一郎 日下部与市 鈴木慎一 谷正男 戸川行男 時岡弘 友田信 中山敦夫 野島寿平 野村平爾 吉村健蔵

 こうして、全体委員会と小委員会とは併行して審議を進めることになったが、その後の全体委員会はこれまで出された意見を更に深めるとともに、総長候補者の選定と選挙管理委員会に関して審議を進めた。前以て総長候補者を絞らずにいきなり選挙を実施するという従来の制度に対して、選挙人が誰に投票してよいか見当もつかないとの不満は、そもそも総長選挙制が初めて採用された時点から鬱積していた。また、選挙人を選ぶ際にも目標がなく、選挙人に白紙委任を与えてしまうことの欠陥も指摘されてきた。そこで、候補者選定方法として、「学内教職員全員の直接選挙により候補者を選ぶ」、「各学部、研究所、学外評議員など十四ないし十五の推薦母体を定め、その母体からの推薦による」、「一定数の連署によって推薦する」という三つの方法が提案されたほか、「学内学外から一定数の委員を選出して委員会を設け、この委員会が三ないし五名の候補者を決め、その上で直接選挙により総長を選出する」といった対案も出された。他方、これまでの議論から総長選挙が大掛かりなものとなるのは必至であった。選挙人が増えて一堂に集まれないようになれば、選挙を公明かつ円滑に推進するため選挙管理委員会が必要となる。そこで全体委員会では、選挙管理委員会の所管事項として、一、選挙人名簿の点検・確認、二、選挙公報(投票に付すべき候補者の経歴書)の配付、三、開票・集計結果の発表等投票の管理、四、関係諸規則の解釈の統一および苦情の処理などについて審議した。また、候補者以外の者に投票した場合の取扱いについても意見を交換し、以上で全体委員会での審議を一応終り、小委員会で作成される要綱案の上程を待つ運びとなった。

三 小委員会の試案

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 その小委員会試案「総長選挙規則改正要綱案」と「小委員会中間報告書」とは六月二十日の第十四回全体委員会に提出された。中間報告書には大略以下のように立案経過が述べられている。

小委員会は発足以来十五回の会合を重ねて、試行錯誤の結果三つの試案がまとまった。全体委員会でのこれまでの議論は終始フリー・トーキングによって続けられてきたので、議事録にはいろいろな意見が散発的かつ断片的に採録されているにとどまり、どの点をとってみても十分に煮詰まっているとは言い難いし、また多数意見と少数意見との区別もつかない状態にある。従って、全体委員会の審議の結果だけを基礎として一つの案にまとめるのは無理であり、寧ろ越権の惧れさえある。そこで小委員会では、選挙の基本に関して発想法を異にする三案を作成し、その選択は全体委員会の決定に委ねることにした。

現行制度に対する批判は、候補者を定めず、しかも相当範囲を絞った少数の選挙人による間接選挙制になっている点に向けられている。裏を返せば、選挙人の範囲を能う限り拡大せよということと、総長を一般の投票によって決定する前に何らかの方法により投票の目標となるべき候補者を定めよということに帰着する。

選挙人の範囲拡大は望ましいと言っても、無限定というわけにはいかない。特定の人物について総長としての適否を判断しなければならないから、この点に関してどの程度認識を持ち得るかということと、判断能力の水準とが問題にならざるを得ない。そしてその限界線は、結局、大学に関係した年数と年齢との両面から定める以外に途はない。小委員会でも紆余曲折を経たが、教員については、講師以上の地位にある専任教員および高等学院教諭の全員を選挙人とすることについては異論がなかった。助手については、大学における地位が暫定的かつ過渡的なものである上に、その大半は大学院生であるから、教職員と同格的に選挙に参加させるべきかどうかにつき消極・積極の両説があったが、結局は参加させることにして案をまとめた。職員の場合は、勤続五年以上または年齢二十五歳以上とする案と、勤続一年未満または年齢二十歳未満の者を除く全職員を選挙人とする案との二案にまとめてある。学外校友については、評議員および商議員を全員選挙人とすることとした。

総長候補者の選定方法に関しては、立候補制のほか、学部教授会その他の推薦母体による推薦制、一定数以上の選挙人の連署による任意推薦制等についても検討したが、結局、一般選挙人の投票による案と、推薦委員会による推薦制との二案にまとめることにした。ところで、大学の人事情勢に精通し、他面、大学の運営の実態を把握し高い次元から客観的に判断し得る地位にあると思われる少数の人々にこれを委ねるのが望ましいというのが、推薦委員会制度の理論的根拠になっている。従って、推薦委員会の委員となるべき人については、自ずからある種の限定が予定されていると見なければならない。委員の被選挙資格および選挙人の範囲に関して種々の案を作成してみたが、結局、一般選挙人の良識を信頼して、委員会は各系統の選挙人の互選により選出された委員を以て構成し、委員となる人の範囲については何らの制限も設けない案に落ち着いた。

選挙人の数をできるだけ拡大し、かつ直接選挙の方法を採用すると、一面において従来から踏襲されてきた学部パリティの要請と衝突し、他面学内・学外選挙人の比率三対二との関連で調整が困難になる。そこで学内選挙人の場合には、(一)学部パリティの原則により選挙人の数を限定する案と、(二)選挙には全員を参加させた上で投票の比重に格差を設けることにより、できるだけこの原則の精神を生かす案と、(三)伝統にとらわれることなく、全員を選挙に参加させると同時に、投票の比重についても格差を設けず全員の投票を平等に扱う案との三つにまとめた。学外校友については、評議員と商議員は学校法人の機関構成員として大学の運営に参加しているので、彼らに選挙権を与えるのはよいとしても、それ以上に選挙人の範囲を拡大することは、理論上はともかく実施面で多大の困難を免れない。そこで、評議員と商議員の全員に選挙権を与えた上で、三対二の比率もこの枠内で考えることにした。もとより選挙には全選挙人の参加が望ましく、特に決定選挙はセレモニーの雰囲気の中で行われるのがよいと考えたので、決定選挙の際には、出頭投票を原則とする反面、不在者投票の特例と、学外商議員については全国に散在している実情に鑑み、郵便投票による特例を認めることにした。

 そして小委員会試案「総長選挙規則改正要綱案」は以下の三案から成っていた。

 第一案の骨子は次のようなものである。すなわち、講師以上の専任教員および助手の全員、高等学院教諭全員、勤続五年以上または二十五歳以上の専任職員全員、ならびに学外評議員全員という、範囲を拡大された選挙人の投票により総長候補者を選ぶが、得票順位が五位以内で投票総数の二十分の一以上を獲得することがその要件とされる。しかるのち、各学部において専任教員および助手により互選された者各五十名計三百五十名、体育局および付置研究所所属の専任教員および助手により互選された者五十名、高等学院教諭により互選された者五十名、産業技術専修学校の専任教員全員(三名)、勤続五年または二十五歳以上の専任職員により互選された者百五十名、ならびに学外評議員・商議員全員(約三百八十名)の総数千名近くによって、先に選ばれた総長候補者について決定選挙が行われる。この決定選挙の段階では、学部選出の選挙人を各五十名とした上で、これを基準に他の系統の選挙人の数を定めるという伝統の学部パリティの原則と、学内・学外三対二の比率とを基準として、選挙人の数が決められている。

 第二案は、候補者推薦委員会を設け、その推薦した候補者について一般選挙人の投票により総長を決定することを骨子とする。推薦委員会は、各学部において専任教員および助手により互選された者各三名計二十一名、体育局および付置研究所所属の専任教員および助手により互選された者三名、高等学院教諭により互選された者三名、勤続五年または二十五歳以上の専任職員により互選された者九名、ならびに学外評議員の互選による者十四名の総計五十名で構成され、各委員が三名連記の投票を行って、上位五位までの得票者を推薦候補者とする。更に教職員による任意推薦制も加味されており、十名以上二十名以内の連署により候補者一名を推薦することができ、その被推薦者の名簿は推薦委員会において各委員が投票を行う前に各委員に配布され、候補者を選ぶ際の参考に供される。こうして総長候補者が選定されたのち、学部・体育局・付置研究所・産業技術専修学校の専任教員および助手、高等学院教諭、勤続五年または二十五歳以上の専任職員、学外評議員・商議員の全員により、決定選挙が実施される。ただし得票数の算定に当り、学部パリティの原則と学の内外三対二の比率との関連で、選挙人に系列と区分により投票の比重に差を設ける案とそうでない案とが並記されてある。

 第三案の特色は、総長候補者を選ぶ選挙人の範囲は第一案と同じであるが、職員の選挙人の下限を勤続一年未満または年齢二十歳未満の者を除く線まで引き下げ、そして決定選挙は、学部パリティの原則および学の内外三対二の比率にとらわれることなく、候補者選挙人全員に学外商議員全員を加えた広範囲の選挙人の投票によって行う点にある。従って、選挙に直接関わる人数は三つの案のうち最も多い。

 なお、小委員会は学生参加の問題も検討したが、それを報告書にまとめるのは若干遅れ、六月二十四日開催の第十五回全体委員会に提出された。「総長選挙に学生を参加させることの可否については、理念論としても政策論としても、賛否の両論がある」という書き出しで始まる「学生参加問題に関する小委員会報告」には、おおよそ次の見解が盛り込まれている。

学生の参加を認めるとした場合、一般の学生が総長選挙にどの程度関心を持っているかは疑問であり、また、たとえ関心はあるとしても、どういう人が総長として望ましいか、抽象的に期待される総長像を描く場合は格別、既に具体的に候補者として挙げられている特定の人について、果して総長としての適否を判断するに必要な十分の知識と認識を持ち得る地位にあるかどうかは、甚だ疑問である、との懐疑論もある。また、総長選挙に学生の参加を認めることは、ひいては身近な学部長の選挙や教員の昇格の決定への参加にも波及することになりはしないか、また寧ろ、その方が距離の遠い総長選挙への参加よりは筋が通っているのではないかとの議論もある。小委員会は問題の重大性に鑑み、学生参加を認めるかどうかの基本方針については全体委員会の決定を俟つこととし、参加を認めると決定された場合、どんな方法で参加させるか、その具体策について検討することにした。

そして(一)学生を教職員と同格的に、またはウェイトに差等を設けた上で、投票に参加させる方式(直接参加方式)、(二)候補者が定まった段階で、信認するかどうかについて参加させる方式(信認投票方式)、(三)最終的に総長と決定された人について、それを容認するかどうかを問う方式(拒否権方式)との三つの参加方式が考えられた。直接参加方式は、学生を教職員と同列に置く点で理論上疑問の余地があるばかりでなく、全員を参加させるにせよ代表者を参加させるにせよ、実施面において多くの困難を伴う。拒否権方式は、総長の最終決定権を学生が握ることになって、大学の権威の上から難色があるばかりでなく、拒否された場合には、積み重ねてきた選挙の成果が根底から覆され、収拾がつかないことになってしまう。そこで小委員会では、信認投票方式が比較的無難であるとの見解に基づき、この方式についてのみ具体案を作成することにした。

その具体案の骨子は左の如く要約することができる。

一、信認投票は、選挙管理委員会の定める期間および時間内に、各学部、大学院各研究科、専攻科ごとに、全学一斉に行う。この期間は三日間とする。

一、信認投票には、候補者の氏名を列記した用紙を用い、信認しない候補者の氏名の上部に×印を付する方法によって実施する。

一、信認投票の結果、信認しない旨の投票が在籍者の過半数に達した候補者があるときは、選挙管理委員会は引続き候補者となるかどうかを確かめ、その回答に従って処置すべきものとする。

一、信認投票が学生の妨害により所定の期間内に実施できないときは、選挙管理委員会は、投票期間を変更することなく、所定の手続により定まった候補者につき決定選挙を実施してよい。

 右の「小委員会中間報告書」と「総長選挙規則改正要綱案」と「学生参加問題に関する小委員会報告書」とは直ちに『早稲田大学広報」や『早稲田ウィークリー』号外に掲載され、教職員・学生の意見を徴するため、七月六・七・八日の三日間に亘り公聴会を開くこととなった。六日午後二時から大隈会館で教職員公述人六名が交々次のような意見を述べた。第一に、大学の理念や新しい大学の自治の立場から管理運営の基本的機構の検討をすべきであるにも拘らず、これよりも先に「総長選挙規則」を改正することは、本末転倒の謗りを免れない。第二に、総長選挙は専任教職員全員による直接選挙とし、学外評議員および商議員は参加すべきでない。参加する場合でも、候補者推薦の段階で参加すべきである。第三に、学部パリティは認められない。また、職員から選ばれる選挙人の数は一つの学部が選出する選挙人の数の三倍となっているが、三学部相当とされる根拠は存在しない。第四に、学生参加は最終段階での拒否権方式ないし排斥方式が望ましく、拒否または排斥の成立には投票総数の過半数でよい。第五に、教職員・学生によるリコール制を新設すべきである。

 翌七日午後二時からは学生公述人の意見聴取が予定されていた。ところが、かねてより規則改正の審議内容を説明せよと団体交渉を求めて開催時刻前から大隈会館玄関に入り込んでいた学生のうち十数名が会場を机や椅子で封鎖したので、公聴会は実施できなくなった。このような事態を迎えて委員会は翌八日に予定した学生公聴会も実現困難と判断し、公述人には文書で意見を寄せてほしいと伝えた。

四 新しい総長選挙規則

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 十日に開かれた第十六回全体委員会の議題は、小委員会が作成した三つの改正要綱案のうちどれを選ぶか、そして学生参加を認めるかどうか、すなわち規則改正の基本方針を決定することが主題であった。ところが、採決に先立って、公述人が「本末転倒」と断じたように採決を急ぐべきでなく、少くとも教職員に対する説明会を開催したのちに採決すべきであるという動議が提出された。この採決延期動議に対して、既に一年前から審議を続けてきて、しかも教職員の代表が審議に参画している以上、予定通りに採決すべきであるとの反論が展開された。この問題は容易に妥協点を見出し難く、動議の取扱いを出席者全員の無記名投票により決定することとなり、その結果、当日予定の採決を延期しないことに決まった。続いて、小委員会報告中の信認投票方式による学生参加を認めるか否かを、同じく無記名投票で採決することとなり、僅差で参加を認めることが決定した。そして最後に、小委員会の三選挙試案に関しどの方式を採用するかについて投票が行われ、第一案への投票数が第二案または第三案へのそれを上回った。

 こうして基本方針が定まったので、七月十四日の第十七回委員会では改正試案の内容を具体的に審議した。学生参加については、「学生の信認投票の期間が三日間では短すぎる」、「×印以外の票を全部信認されたと看做すのは問題であり、信認には○印を、不信認には×印を付すことにしてはどうか」、「不信認の成立要件を在籍学生の過半数ではなく、例えば、在籍学生の過半数の投票により有効投票の過半数で成立するとか、在籍学生の三分の一以上の投票により有効投票の三分の二以上で成立するとかに改めるのがよい」、「不信認投票が多数を占めた場合、候補者を自動的に排除するのでなければ、学生参加は形式主義に陥る」などの意見が述べられた。これらに対し、「投票期間の延長は不都合な面もあるので、原案通りでよい」、「学生は候補者を熟知していないから、積極的に○×を明記させるのは無理である」、「学生参加の基本は、教職員と異り、個々人としてではなく学生総体として関わるのであるから、過半数でよい」、「自動的に候補者から除くというのでは、候補者を選んだ教職員の権威が地に堕ちる。良識ある候補者は、不信認投票が多数を占めたならば当然辞退するであろう」といった反論が出された。

 総長選挙方式第一案をめぐっては、主として学内委員より、「範囲が絞られた選挙人により決定選挙が行われる以上、候補者の選挙は専任の教職員全員とすべきである」、「選挙人の範囲を、教職員・助手とも勤続一年以上であって二十三歳以上の者と改めてほしい。これが容れられない場合は、職員については二十二歳以上の者とし、専任扱いの嘱託や全日制の副手も含めてほしい」、「職員選挙人の範囲を小委員会の第三案に盛られた範囲(本大学の卒業生でない勤続一年未満の職員および年齢二十歳未満の職員を除く職員全員)としてはどうか」といった修正意見が出された。また案では、候補者選挙の結果候補者に選ばれた者に対して、候補者となることを承諾するか否かを確認するようになっているけれども、「諾否を得る手続は不要である」との見解も述べられた。

 これらの意見や反論や要望を斟酌して規則を成文化する作業は再び小委員会に付託され、二十四日開催の第十八回委員会に「総長選挙規則(案)」と「総長選挙規則施行規程(案)」とが諮られた。職員選挙人の範囲を年齢二十二歳以上の専任職員に修正する旨の提案や、候補者の略歴・業績書に候補者自身の所見を記載するよう修正する旨の提案その他、意見が分かれた若干の条文、更には、学生の信認投票の結果不信認とされた候補者の扱いに関して、候補者に決定選挙の候補者となるかどうかを確認するか、それとも候補者から除外するかの二案が並記された条文については、無記名投票により採決が行われた。こうして幾つかの修正を施された上で評議員会に答申された新規則案は、七月三十日の臨時評議員会で審議され、原案通り可決、即日施行された。その重要条文を左に摘記しよう。

総長選挙規則(抜粋)

第一章 総則

第二条 総長の選挙は、候補者の選挙、学生による信認投票および決定選挙の三段階に編成して実施する。

第二章 選挙人、選挙人名簿

第十一条 次の各号の一に該当する者を総長候補者選挙の選挙人とする。

一、講師以上の地位にある専任教員 全員

二、助手 全員

三、勤続五年以上または年齢二十五歳以上の専任職員 全員

四、校規第二十六条第五号および第六号の規定による評議員(以下「学外評議員」という。) 全員

第十五条 次の各号の一に該当する者を、総長決定選挙の選挙人とする。

一、各学部において所属の講師以上の地位にある専任教員および助手によって互選された者 各五十人 計三百五十人

二、体育局および付置研究所所属の講師以上の地位にある専任教員および助手によって互選された者 五十人

三、高等学院において所属の教諭によって互選された者 五十人

四、産業技術専修学校および国際部所属の講師以上の地位にある専任教員 全員

五、第十一条第三号の規定による専任職員によって互選された者 百五十人

六、学外評議員および商議員会規則第二条第一項第一号、第三号および第四号の規定による商議員(以下「学外商議員」という。) 全員

第十六条 前条第一号ないし第三号の選挙人の互選は、十五名連記の無記名投票によって行なう。ただし、前条第二号の選挙人の互選は、体育局において実施する。

第三章 選挙管理委員会

第二十条 管理委員会は、次の委員をもって構成する。ただし、委員定数の三分の二以上の委員の選出があったときは、委員会は成立するものとする。

一、各学部において第十一条の規定により総長候補者の選挙の選挙権を有する所属の教員および助手のうちから選出する者 各一人 計七人

二、体育局および付置研究所において第十一条の規定により総長候補者選挙の選挙権を有する所属の教員および助手のうちから選出する者 一人

三、高等学院において所属の教諭のうちから選出する者 一人

四、部課長事務長会において第十一条の規定により総長候補者選挙の選挙権を有する職員のうちから選出する者 三人

五、商議員会長が学外商議員のうちから指名する者 三人

第二十一条 管理委員会の所管事項は、次のとおりとする。

一、選挙人名簿の確定に関する事項

二、選挙期日に関する事項

三、候補者略歴・業績書に関する事項

四、投票の管理に関する事項

五、選挙関係規約の解釈および選挙手続に関する苦情の処理に関する事項

六、前各号のほか選挙の実施に必要な事項

第四章 総長候補者の選挙

第三十五条 総長候補者の選挙は、第十一条の定める選挙人の投票によって行なう。

第三十六条 前条の投票は、単記無記名により、一人一票とする。

2 二人以上の氏名を記載した投票および投票者の氏名を記載してある投票、または判読し難い投票があるときは、これを除外して各候補者の得票数を算定する。

第四十一条 得票順位が五位までであって、その得票数が投票総数の二十分の一以上である者を総長の候補者とする。ただし、五位までの得票者のうち、候補者となることを辞退した者があるときは、その者を除いて得票順位を順次繰り下げて候補者を定める。

第四十二条 管理委員会は、前条の規定によって定まった候補者につき、三日以内にその意向を確かめて決定選挙に付すべき候補者を決定する。この場合の諾否の回答は、書面によるべきものとする。

2 候補者選挙の後、三日以内に候補者となるかどうかの回答のない者、または五日以内に次条の規定による候補者略歴・業績書を提出しない者もしくはできない者は、候補者となることを辞退したものとみなす。

第四十三条 候補者となることを受諾した者は、二日以内に略歴・業績書を管理委員会に提出しなければならない。

第四十五条 不可抗力その他特別の事情により選挙人が、投票所に出頭して投票することが不適当と認められるときは、管理委員会は、大学と協議の上、選挙人の全員につき、出頭投票にかえて郵便投票によらしめることができる。

第五章 信認投票

第四十九条 学部、大学院または専攻科に在籍する学生は、停学または休学中の学生を除き、前章の規定によって定まった総長候補者につき、本章の定める手続きにより信認するかどうかの投票(以下「信認投票」という。)をすることができる。ただし、聴講生、特殊学生、委託学生および学則の外国学生の規定による外国学生はこの限りではない。

第五十二条 管理委員会は、信認投票の日時および期間を定めて、各学部、大学院各研究科および専攻科に対して通知しなければならない。この投票期間は三日間とする。

第五十六条 投票は、信認しない候補者の氏名に×印を記入する方法による。ただし、候補者の氏名に×印以外の符号を記載してある投票および何らの符号も記載していない投票は、信認・不信認の判定にあたっては、信認しない旨の投票ではないものとして取り扱い、文言、図画等符号以外の記載は、記載のないものとみなす。

第五十九条 信認投票の結果、信認しない旨の投票が在籍学生数の過半数に達した候補者があるときは、管理委員会はその候補者について、決定選挙の候補者になるかどうかを確かめなければならない。この場合の回答は書面によるべきものとし、三日以内に回答がない場合、または回答を求めることができない場合は辞退したものとして取扱う。

第六十一条 信認投票が妨害により所定の期間内に実施することができないときは、管理委員会は投票期間を変更することなく、所定の手続により定まった候補者につき、決定選挙を実施する。ただし、所定の投票期間内に実施された投票があるときは、その投票によって信認、不信認の判定を行なう。

第六章 決定選挙

第六十二条 総長の決定選挙は、前二章の規定により定まった候補者につき、本章の規定するところにしたがい、決定選挙人名簿に記載された選挙人の投票によって実施する。

第六十三条 決定選挙に付すべき候補者が辞退その他の事由により一人になったときは、その候補者につき決定選挙を行なう。ただし、その候補者の候補者選挙における得票数が、投票総数の過半数に達しているときは、決定選挙の投票を経ないでその者を当選者とする。

第六十八条 投票は、次条および第七十条に定める場合を除き、投票所に出頭して行なうべきものとする。投票用紙は、選挙人名簿と照合の上投票所において交付する。

第六十九条 旅行、やむをえない用務その他の事由により、選挙の日に出頭して投票することができない選挙人は、学外商議員を除き、管理委員会の承認を経て、その定める日時に、事前に投票することができる。この場合の手続は、施行規程をもって定める。

2 前項の投票の期間は、三日間とする。

第七十条 学外商議員は、その選択にしたがい、出頭して投票し、または郵便投票によることができる。

2 郵便による投票は、投票の締切日の正午までに郵便局から引渡しを受けたものに限り有効とする。

3 投票用紙は、事由の如何を問わず再交付をしない。

第七十二条 投票総数の過半数の得票者を当選者とする。ただし、最高得票者の得票数が投票総数の過半数に達しないときは、二位までの得票者につき再投票を行ない、比較多数の得票者をもって当選者とする。この場合、得票数が同数であるときは、くじで当選者を決定する。

2 前項のただし書の規定により再投票を実施する場合には、管理委員会は、第六十二条の規定による選挙人に対して、再投票の日の十四日前に、再投票の日時および場所を通知しなければならない。

付則

第七十六条 この規則は、昭和四十五年七月三十日から施行し、旧規則(昭和二十六年三月一日制定)は廃止する。

 改正の要点は五つある。第一に、従前は学外商議員六十四名を含む二百三十三名で構成される総長選挙人会で間接的に行っていた総長選挙を、候補者の選挙、学生による信認投票、決定選挙の三段階方式に改めたこと。第二に、第一段階の総長候補者選挙には学外商議員は参加せず、教職員のほぼ全員と学外評議員全員との約千七百名で直接選挙により行うようになったこと。第三に、選出された総長候補者を学生の信認投票にかけることにより、学生の意思を反映させる途を開いたこと。第四に、これまでの二百三十三名に比べると、学外商議員全員を含めて九百八十三名と格段に拡大された範囲の人々により、決定選挙が行われるようになったこと。第五に、選挙管理委員会を設置し、候補者の略歴と業績書を作成・配付して、その人物が総長として適任であるか否かの判断材料を提供したこと。要するに、学苑の頂上人事をこれまで以上に民主化し、学苑を統率する人物が可能な限り多数の人々の支持を得るようにすることが、改正「総長選挙規則」の眼目だったのである。

 ところで、新規則に則って総長選挙を行うとなると、選挙公示から始まって新総長が決定するまでの期間がひと月半と長くかかる可能性があるため、現任総長の任期が満了する八月末日までに新総長が決まらず、総長不在の期間が生じる惧れが確実となった。総長代行を置こうにも、現行校規の総長代行規定は総長の任期満了の場合に適用されることを予想していない。そこで、「総長選挙規則(案)」と「総長選挙規則施行規程(案)」とを評議員会に答申することが決まった右の第十八回委員会において、「現今の激動する学内情勢をとりまとめるのに短期間であっても総長がいなくなるのは好ましくないし、総長が欠けたままで選挙を実施することにも問題があろう。現任総長の任期を後任総長が決定するまで伸長できることを、校規に盛り込んではどうか」との動議が出された。これについて意見を交換した結果、右趣旨に基づく校規一部改正の検討をも評議員会に進言することとなった。その結果、七月三十日開催の臨時評議員会で、総長の任期を規定した校規第九条第一項に「但し、任期の満了までに後任の総長が定まらないときは、後任の総長が就任するまで、その任期を伸長する」を追加することが決定し、文部大臣の認可を得た八月二十五日から施行された。新しい制度の下で行われた最初の総長選挙については本編第五章に、校規および同付属規則改正案起草委員会のその後の作業については第六章に、それぞれ後述しよう。

五 その後の規則改正

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 前節で述べた規則に則って実施された総長選挙の結果、規則の一部に修正を必要とする問題点が幾つか明らかになった。加えて、昭和五十一年五月、法学部大学問題検討委員会が法学部教員会に提出してその承認を得た総長選挙制度改善に関する中間報告書が理事会に提出され、また六月には教員組合が、七月には職員組合がそれぞれ理事会に改正を要望した。理事会は、総長選挙制度の基本的枠組が校規および同付属規則改正案起草委員会の尽力により改定されたこと、ならびに、新しい制度による選挙がそれまでに二回しか行われていない実績に鑑みて、全面的に再検討するのは時期尚早であるとしながらも、取敢えず見直すべき問題を次の七点に整理し、十二月十五日開催の定時評議員会に審議を提案した。

(イ)選任扱いの外国人講師の選挙権について

(ロ)大学院学生である助手の「選挙人」と「信認投票者」の二重資格について

(ハ)選挙人資格と候補者選挙人名簿の確定について

(二)選挙管理委員会委員の選出、被選挙権について

(ホ)選挙管理委員会で所掌すべき苦情申出者の範囲について

(へ)総長候補者の略歴・業績書に候補者の抱負を記載することについて

(ト)学生の信認投票の期間を延長することについて

 この理事会提案を承けた評議員会は翌五十二年三月、総長選挙規則検討小委員会の設置を決めた。そして左の学内評議員・理事十五名と学外評議員十名とで成る小委員会は四月、委員長に内古閑、副委員長に伊達を選出したあと、直ちに検討を開始した。

学内委員

有倉遼吉 大杉徴 掛下栄一郎 佐藤昭夫 清水司 滝口宏 多熊一郎 伊達邦春 辻村敏樹 鳥羽欽一郎 中喜一 長島健 古川晴風 吉阪隆正 渡部辰巳

学外委員

浅沼栄吉 内古閑寅太郎 岡野伊三雄 黒板駿策 佐々木省三 立花盛枝 谷鹿光治 友田信 野口保元 野島寿平

小委員会は十二回に及ぶ会合を重ねたのち、翌五十三年四月十五日に検討結果を評議員会に答申した。その審議経過は『早稲田大学広報』に公表されている。その審議と結論とを順次見ていこう。

 期間を限って契約する外国人講師が選挙資格を持つとは規則に明記されていず、過去二回の選挙において選挙管理委員会は選挙権なしと決定してきた。小委員会では、選挙権を付与する根拠を外国人であるかないか、また契約期間があるかないかに求めるべきではないとの見解が大勢を占め、専任扱いの外国人講師に選挙権を与えることにした。

 助手は総長決定選挙の投票権を有している。ところが、大学院学生である助手は、規則の上では学生として信認投票権をも有している。小委員会は前者の選挙権を優先させるべきと考えて、信認投票者の範囲から助手の身分を有する学生を除くこととした。なお小委員会は、外国人講師の選挙権と関連して、国際部の留学生を除く外国人学生にも信認投票権を与えるのがよいと判断している。

 総長候補者選挙人名簿の確定日は選挙公示の前日となっている。しかし、公示から選挙実施日までの間に選挙人資格を取得した者を排除するのは適当でないと考えた小委員会は、名簿確定後であっても、選挙日から十五日前までに資格を得た者については選挙権を認めることになった。十五日という期限を設けたのは、名簿閲覧にその程度の日時の余裕が必要であろうと判断したからである。

 問題点(ニ)につき、五五七頁に前掲した規則第二十条では、選挙管理委員会委員の選出権および被選出権が国際部と専修学校の専任教員および助手に与えられていない。これは不公正であるとの不満は以前からあり、小委員会は第一項第二号を手直しして、国際部と専修学校との選出区分を体育局および付置研究所の範疇に加えることにした。

 規則には、選挙人は選挙手続に関する瑕疵を理由として苦情を選挙管理委員会に申し出ることができると明記されている。しかし、例えば勤続五年未満または年齢二十五歳未満の専任職員や、信認投票権しか持たない学生や、選挙権のない学外校友など、選挙人以外から苦情が出されたならば、どう処理するか。この問題を検討した小委員会は、苦情申出者の範囲をいたずらに拡大すると混乱を招いて選挙管理委員会に過重な責任を負わせる惧れがあるとの理由で、その範囲を変更しないという結論に至った。ただし、選挙に関与する学生が苦情を申し出ることができないのは妥当でないから、信認投票の段階における手続上の瑕疵を理由とする場合に限り苦情の申出を認めることとした。

 候補者の略歴・業績書に抱負を記載するか否かという問題点(へ)は、小委員会で最も議論が紛糾したところである。「総長候補者が抱負を公表したことによりその抱負に拘束され、公正な大学行政を執行する上に却って支障を来すのではないか」、また「公職選挙と異り、抱負を発表しなくても、総長にふさわしいと選挙人が判断して良識をもって選出するのであるから、抱負などを公表する必要はない」といった反対意見が出された。その一方で、「候補者が抱負を発表したくても許されないのは適当でない」、「選挙人の立場からすると、候補者がどのような抱負を持っているかを知ることは、投票に際して不可欠の要件である筈だが、強制するのは問題なので、抱負の公表は候補者の任意として認めるべきである」、「任意制にすると、抱負を公表した候補者と公表しなかった候補者とがある場合、公平さに欠ける。抱負を発表しない候補者については、抱負に代えて推薦文を載せることを認めるのがよい」といった賛成意見が出された。これらに対して、「候補者の抱負の公表については基本的に認めるべきでないが、候補者以外の者が作成する推薦文のみの記載は認めてよい」との意見も述べられた。結局、意見の一致は見出せず、委員の投票により採決することとなり、僅差で抱負公表が可となった。次いで、候補者が希望する場合に抱負または推薦文の記載を認めるか、それとも、推薦文のみの記載を認めるかの採決に移ったが、賛否同数となったので、最終的決定は評議員会に委ねることになった。

 最後に、三日間となっている学生の信認投票の期間に関しては、たまたま登校日と重ならないために投票しない学生が多いので、これを五ないし六日間に延長すべきかどうかが審議された。「事前に信認投票日を周知している」、「投票期間を延長すると、学部等の投票箇所に過重の負担を課することになる」、「六日間も延長すると選挙日程全体に支障が出る」といった理由で反対意見が多かった。小委員会は、必要書類の交付開始日から投票終了日までの六日間の期間は変更せずに、その代り書類交付開始日を三日前ではなく二日前に改めることにしたので、投票期間は一日延長の「四日間」となった。

 答申を受けた評議員会は、五月二十六日、「総長選挙規則」改正の件を審議した。問題点(へ)以外はすべて改正原案どおりに可決されたが、(へ)の抱負および推薦文に関する件は評議員会でも投票により決することになり、推薦文のみを可とする案が採択された。こうして五五八頁の第四十三条は次のように改正された。

第四十三条 候補者となることを受諾した者は、候補者選挙の後、五日以内に略歴・業績書を管理委員会に提出しなければならない。ただし、候補者が希望する場合は、略歴・業績書のほかに、候補者以外の者が作成する推薦文を、提出することができる。

2 前項の推薦文の字数は、六百字以内とする。

3 推薦文を提出する場合は、推薦文の末尾に推薦文作成者の代表者一人の氏名を明記しなければならない。この場合においては、その代表者は、第十一条に定める候補者選挙の選挙人でなければならない。

改正「総長選挙規則」は即日施行された。なお、議論の対象となった産業技術専修学校は五十三年四月に早稲田大学専門学校へと移行したので、規則中の「専修学校」が「専門学校」と改められたことを付記しておく。

 本庄校地に第二の付属高等学校が開校した昭和五十七年四月には、本編第六章第四節に後述する校規改正に付随して、「総長選挙規則」も改正された。すなわち、総長決定選挙人の範囲と資格とを定めた五五六頁に前掲の第十五条に新第四号「本庄高等学院において所属の教諭によって互選された者 二十五人」が挿入されたほか、選挙管理委員会委員の選出範囲を定めた第二十条の第三号中の「高等学院」が「両高等学院」に、「一人」が「各一人 計二人」に修正された。この改正と連動して六月に「商議員会規則」も改正され、本庄高等学院のほかに国際部および電子計算室も新たに商議員選出母体に加えられた結果、学内商議員の定数が二百二十七名以内から二百四十二名以内に改められたので、決定選挙に参加する学外商議員の数も三百五十名以内から三百七十名以内へと増えている。